メニュー 閉じる

アラブの王様とサウジアラビアとスパイの父親と




 

 

先日にこんなツイートが流れてきて笑っていました。

ネタ元になったのは「私はアラブの王様たちとどのようにつきあっているのか」という本です。
不覚にもこの著者について全く知らずでした…

記事になったエピソード以外にも「王子、告白してふられる」みたいなほっこりする話も多く紹介されますが、
実は国際政治的な視点から企業活動までの概観がとれる素晴らしすぎる本だったりします。
(余談ですが作者の方、日立製作所出身なのですね)

もちろんそういった微笑ましい(?)エピソードと同じくらいに本気で危険なエピソードも多いはずです、書けないことも多々あるでしょうし…
私も知る範囲のみで言うと、中東に関しては「金とコネ、他になにか?」がまず浮かびます。

この本でアラビア文化に親しみを感じないことはないのですが、
正直な気持として、日本文化を背景とする人とはかなり相性の悪い文化だと思います。
歴史的に他民族と交わることがなかった島国と、様々な人種と交易したり戦ってきた砂漠の民というだけで、数千年かけて養われた価値観、あらゆる物事のとらえ方がまったく違いますし。
宗教というものが「必要」から生まれた民族に対して、無宗教に近い日本ですと、彼らの行動原理自体が理解が及ばないでしょう。
それを「そういうものか」で流せるのならいいのですが、直に自分が関わるのでそうもいかないでしょう。



ところで中東とは

中央アジアと同じく地政学的に使われる用語であって、中東はアメリカ海軍のマハンが生んだ概念で、イギリスによって運用された区分らしいです。
この書中では中東全般のほかに、個別にサウジアラビアの成り立ちなどについても述べられていますが、作者以上のことを語れるとは欠片も思ってませんので、そこには書かれていない裏話的なものをひとつ。
世紀のスパイ、ではなくその父親もまた別方向で凄まじい人間であり、中東にかかわりの深い人物であったという話です。

サウジアラビア建国の立役者

第一次大戦の勃発をうけ、大英帝国はドイツの同盟国であるオスマン・トルコ帝国を打倒しないとならない状態になりましたが、当然自国のみでは達成できません。
そこで考えられたのが、内側からの崩壊、いわゆる「アラブ反乱」を起こすことでした。
(個人的見解なのであしからず)

「アラビアのロレンス」として知られるT.E.ロレンスとともにこの計画をたて、
アラビア半島一帯にいたベドウィンの一族を率いるサウード家の当主、のちに初代国王であるイブン・サウードの参加を説いたのが、シンジャン・フィルビーという人物なのですが、イギリスMI6のメンバーでありながら祖国を裏切りソ連の諜報員、二重スパイとなっていたキム・フィルビーの父親その人だったりします。

彼はスリランカの零落農園生まれながらも、ケンブリッジを卒業し当時のインド、パンジャーブ州に高等行政官として赴任、ドイツ語、フランス語からウルドゥ語、ペルシャ語にアラビア語と数か国語を話す人物だったそうです。

グレートブリテン以下略王国は何をしたかったのか?

目論見どおりか否かはさておき、オスマントルコ帝国は崩壊し第一次大戦も終わりを迎えましたが、
大英帝国はなぜか計画に参加したサウード家ではなく、そのライバルのシャリーフ家を厚遇し、
イブン・サウードをアラブの盟主とする気はないようでした。
なぜ、どのようにライバルだったのか、それぞれの働きなどはここでは割愛します。

なんというか、この辺りからスエズ運河でやらかしたような、
グレートブリテン以下略王国っぽさがあふれ出して止まらない気がします。

そしてシンジャン・フィルビーはこのイギリス政府の方針に強く反発し、イブン・サウードこそアラブ民族の長にふさわしいと公言してはばからず、祖国イギリスと対立します。
結果、後にサウジアラビア国王となったイブン・サウードはシンジャン・フィルビーを強く信頼し、またシンジャンを外交顧問に迎え、彼はイスラム教に改宗しアラビア人女性を二人目の妻にします。

そしてペルシャ湾沿いのアルハサにて、原油の大鉱脈が発見された際にはシンジャンはサウジの側に立って、SoCal*1との交渉を担います。
そしてSoCalはサウジアラビアから60年にわたる原油探査と掘削の権利を独占権を得て、この契約によってサウジアラビアは莫大な収入を安定的に得ることになり、結果アメリカとの瑩山関係は深まり、政治的同盟に繋がっていき、今に至るわけです。

まあイギリスの影響力がガタ落ちしてアメリカにとられた、と見ることもできますが、そのあたりは立場や視座などでどうにも解釈できそうですので、真実というものはなさそうです…。

このあたりの流れはこちらで

 

 

*1 SoCal=スタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア (Standard Oil of California)
ロックフェラーのスタンダードオイルが34社に分割されたうちの一つ、ガルフ石油と合併し、現在はシェブロン・コーポレーション (Chevron Corporation) に社名変更。
国際石油資本、スーパーメジャーの一つ。
https://www.chevron.com/about/history


ロックフェラーなどの成り立ちについてはこちらに詳しく書いてあるものの
「どうやったらこんな読みにくい本になるねん」
と憤るくらいに読みづらいので、おすすめかと聞かれてると微妙です…笑




 

 

Posted in このえ書架 , 雑学

Related Posts